ただ)” の例文
というのを、為守が聞いて腹を立てて、早速法然へ手紙でそのことの不審をただしてやると、法然は、決してそんなことがある筈はない。
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
これをただそうと正解が大いに発奮努力することでありまして、もし世の中に初めから正解ばかり行われていたら、世の中は一所停滞であります。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
水沼間・水沼・弥努波(または、婆)と三様に、出雲文献に出ているから、「水汲」とただすのは考えものである。
水の女 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
「よしよしお前は苦しそうだ。俺が代って懺悔ざんげしてやろう。違ったところを、お前がただすがいい」
わたくしが初て帚葉翁とまじわりただしたのは、大正十年の頃であろう。その前から古本のいちへ行くごとに出逢っていたところから、いつともなく話をするようになっていたのである。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
槐南先生も大変同情して、その中の八字か九字をただして、漢文としても、また日本読みの調子としてもいいように直して下さった。今でも谷中の墓地に、矢田部雄吉の墓の背面に刻んである。
故郷七十年 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
先生が彼をちらりと見る度びに電気にでも感ずるように居ずまいをただしたり、緊張の顔色を見せるのは何かやはり先生に深く影響されているに違いありません。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
と訊きただしますと、池上はさすがにぎょっとして、わたくしの顔を見詰めましたが、しかし力なく
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)