角町すみちょう)” の例文
少時前いまのさきッたのは、角海老かどえびの大時計の十二時である。京町には素見客ひやかしの影も跡を絶ち、角町すみちょうには夜をいましめの鉄棒かなぼうの音も聞える。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
少時前いまのさきッたのは、角海老かどえびの大時計の十二時である。京町には素見客ひやかしの影も跡を絶ち、角町すみちょうにはいましめの鉄棒かなぼうの音も聞える。
里の今昔 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
だから京女がぞくぞく江戸へ売られて、角町すみちょうだの、伏見町だの、境町だの、住吉町だのと、こっちの色街の出店が二百里も先にできてしまった
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ききつけて主水之介は悲しげに微笑をもらすと、やがてのっそりと道をかえながら、角町すみちょうの方に曲って行きました。
内は角町すみちょうの水菓子屋で、出ているのは清川(引手茶屋)なんですけれど、どちらも狭いし、それに、こんな処でしょう、落着いて養生も出来ないからって……ここでも大切なねえさんだわ。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
栄子は近所に住んでいる踊子仲間の二、三人をもさそってくれて、わたくしを吉原の角町すみちょう、稲本屋の向側の路地にある「すみれ」という茶漬飯屋まで案内してくれたことがあった。
草紅葉 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
おなじく角町すみちょう海老屋えびやの女郎客の難に逢いし事
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)