陸を行けば、じき隣の越中の国に入るさかいにさえ、親不知子不知おやしらずこしらずの難所がある。削り立てたような巌石のすそには荒浪あらなみが打ち寄せる。
山椒大夫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
これは全く親不知子不知おやしらずこしらずの嶮であります。親は子を知らず、子は親を知らず、各自が自分の十字架を負うて一人ずつ越えねばならぬ狭き嶮路です。
驀出ばくしゅつし、急転し、新巴里パリー名所「親不知子不知おやしらずこしらず」——もっとも交通巡査だって根気よく捜査すると一人ふたりそこらに居るにはいるんだが、はじめからすっかり降参して
文吉ぶんきちは、ある夏休の末のこと、親不知子不知おやしらずこしらずの海岸に近い、従兄いとこの家へあそびに行きました。
さがしもの (新字旧仮名) / 土田耕平(著)
今までにも一度親不知子不知おやしらずこしらずの険を通ったことがありまして、八章の終わりの方です。