衣嚢いのう)” の例文
××もまた同じことだった。長雨ながあめの中に旗をらした二万トンの××の甲板かんぱんの下にも鼠はいつか手箱だの衣嚢いのうだのにもつきはじめた。
三つの窓 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「おお当直将校。そういう妙な噂が立ったので、いま杉田の衣嚢いのうをとりよせて調べてみると、ほら、こういう遺書がでてきました」
浮かぶ飛行島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
答えたのは一番年嵩としかさの一等兵である。四十は既に越した風貌である。身体に合わない略服を着て、見すぼらしく見えた。衣嚢いのうも小さい。
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
私は、丁度、その中下甲板の検査をする役に当つたので、外の仲間と一しよに、兵員の衣嚢いのうやら手箱やらを検査して歩きました。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
重い衣嚢いのうをかついで、この峠にたどりついた時、海が一面にひらけ、真昼の陽にきらきらと光り、遠くに竹島、硫黄島、黒島がかすんで見えた。
幻化 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
私は壕の中に入り、衣嚢いのうの中から便箋びんせんを出した。私は卓の前にすわり、便箋を前にのべ、そしてじっと考えていた。
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
衣嚢いのうの整理をしていたらしい兵隊が、急いで吉良兵曹長のところに来た。
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)