血溜ちだま)” の例文
思ひの外血溜ちだまりもなく、反對側の方——二間ばかり先に匕首の鞘が落ちて居るのは、自分の手で夢中になつて投げ飛ばしたのでせうか。
老鶯ろうおうの声が聞こえている。が、一人の人通りもない。血溜ちだまりの中で幾匹かのありが、もがき苦しんで這いまわっている。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
うっかり血溜ちだまりへ踏み込んだものに違いない……『だが、今度はこいつをどうしたものかなあ? この靴下や、房の切れっぱしや、ポケットをどこへやったものだろう?』
ストーブが赤々と燃えていて、そのそばに敬二郎がばったりと倒れていた。胸のところから血が流れて、ストーブと熊の皮の敷物との間の敷板が真っ赤な血溜ちだまりになっていた。
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
正勝はそう言いながら、ベッドの横の血溜ちだまりに蔦代の足を立たして、その足を血に染めた。
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)