薬籠中やくろうちゅう)” の例文
この一箇名門の脆弱児ぜいじゃくじを、自己の薬籠中やくろうちゅうにして、完全に利用しきろうとする底意には、何らの矛盾むじゅんも良心のまどいも覚えはしない。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
破邪顕正の大役承わる大目付までをもおのが薬籠中やくろうちゅうのものにしているとしたら、ゆめ油断はならぬ。
必ずしも敵国人がここへ入り込んでいなくても、その手先を勤める黄色人種がいないとは云えぬし、日本人にしても情を知らずして敵の薬籠中やくろうちゅうのものとなっている者がないとは限りません。
偉大なる夢 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
たちまち鉛華をおのれたちの薬籠中やくろうちゅうのものとしてしまったからである。
かかるうち知識は交換されて互いの薬籠中やくろうちゅうに収められていた。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
この者どもはもう完全に寝返って、龐統の薬籠中やくろうちゅうのものになっているらしい。岩乗絶壁がんじょうぜっぺきのような鉄門の下に立ってこう呶鳴った。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼等は今やわが幹部政治家をほぼ薬籠中やくろうちゅうのものとすることに成功しそうです。そして今わが国民をも彼等の思う色彩に塗りかえ、あらゆる進取的精神を麻痺まひさせるためにその用意に掛っています。
宇宙尖兵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
おひとよしでどうにでもうごく権大納言ノ局は当然、廉子の薬籠中やくろうちゅうのものであり、小宰相はいつも二人の白眼視とトゲのうちにおかれていた。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてただこの一怪物を、将来の用のため、自家の薬籠中やくろうちゅうのものにしなければと、ひそかに誓っていただけだった。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とすると、彼もまた、秀吉の薬籠中やくろうちゅうの一個でしかなかったともられるが、長い史眼をもってすれば、豊臣氏の滅亡後も、前田氏はなお長く北国の雄たるを保った。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
家康は、この好人物の、調法ちょうほうなことを知っている。この人を、自家薬籠中やくろうちゅうのものにして、秀吉に当らせたり、世上へ見せる偶像として、利用した覚えがあるからである。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
矢田川原の会見以来、かれはすっかり秀吉の薬籠中やくろうちゅうの物となりきってしまい、何をするにも
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
羽柴藤吉郎をまずこちらの薬籠中やくろうちゅうのものとしてから信長に会うも遅くはない
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
“彼はすでに秀吉の薬籠中やくろうちゅうのものたるのみ”
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)