聞伝ききつた)” の例文
旧字:聞傳
ちらほら聞伝ききつたえてはおりますが、いずれに致せ、高尚な御議論、御研究のほうでござって、こちとらづれ出家がおりをする、偶像なぞは……その
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
れは妙なりとおおいに喜び、その時東京府の課長に福田と云う人がもっぱら地所の事を取扱うと云う事を聞伝ききつたえ、早速福田の私宅を尋ねて委細の事実を確かめ
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
隅田川はその当時のあたり眺める破損の実景と共に、子供の折に見覚えたおぼろなる過去の景色の再来と、子供の折から聞伝ききつたえていたさまざまの伝説の美とを合せて
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
あの時古久先生は大層不機嫌であったが、趙貴翁と彼とは識合しりあいでないから、定めてあの話を聞伝ききつたえて不平を引受け、往来の人までも乃公に怨みを抱くようになったのだろう。
狂人日記 (新字新仮名) / 魯迅(著)
近くは上総かずさ下総しもうさ、遠い処は九州西国さいこくあたりから、聞伝ききつたえて巡礼なさるのがありますところ、このかたたちが、当地へござって、この近辺で聞かれますると、つい知らぬものが多くて、大きに迷うなぞと言う
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)