缺片かけら)” の例文
新字:欠片
もう駄目だとさとつた私は、二つに割れた石板せきばん缺片かけらかゞんで拾ひながら、最惡の場合に處する爲めに、勇氣をふるひ起した。時は來た。
だが、僕は、君があの証人と何か話合っている間に、あの芝草の中から、こいつを、このレコードの缺片かけらを、拾い上げたんさ。
花束の虫 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
雲一つない鋼鐵色の空には、鎗の穗先よりも鋭い星が無數に燦いて、降つて來る光が、凍り果てた雪路の處々を、鏡の缺片かけらを散らした樣に照して居た。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
逃出にげだすとときに、わがへの出入でいりにも、硝子がらす瀬戸せとものの缺片かけら折釘をれくぎ怪我けがをしない注意ちういであつた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その旗は黒く、細ぼそとしてゐた。窓の外には、嵐が空をかけめぐつてゐた。さうして闇が、白と黒との缺片かけらに、引き裂かれてゐた。月光がときをり長い稻妻のやうに過ぎた。
「……何んですか。——ああ。レコードの缺片かけらじゃありませんか。これが、一体どうしたと言うんですか?」
花束の虫 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)