縦横無尽じゅうおうむじん)” の例文
その危険きわまる電線が生命の唯一の安全地帯である住家いえの中まで、蜘蛛くものように縦横無尽じゅうおうむじんにひっぱりまわされてある。
電気看板の神経 (新字新仮名) / 海野十三(著)
なかにも目ざましいのは、山県蔦之助やまがたつたのすけ巽小文治たつみこぶんじのはたらき。見るまに、鬼面突骨斎おにめんとっこつさい浪切右源太なみきりうげんたを乱軍のなかにたおし、縦横無尽じゅうおうむじんとあばれまわった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは幅の広い地下穿きらしいもので、その辺をやたらに歩き廻ったと見えて、縦横無尽じゅうおうむじんの跡がついている。
夢遊病者の死 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
軍事にかけては、ほとんど天才と言っていい大村は、新政府の中枢ちゅうすうともいうべき兵部大輔のこの要職を与えられると一緒に、ますますその経綸けいりんを発揮して、縦横無尽じゅうおうむじんの才をふるい出したのである。
流行暗殺節 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
むらがるつるぎを雑草ともおもわず、押しかかるやりぶすまをれ木のごとくうちはらって、縦横無尽じゅうおうむじんとあばれまわる怪力かいりきは、さながら金剛力士こんごうりきしか、天魔神てんまじんか。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いきなり、着ていた合羽を両手にしぼると、それをつかんで縦横無尽じゅうおうむじんです、蚊でもハタくように振廻してゆく。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
心の底からいかっている顔つきで、縦横無尽じゅうおうむじんに振って来るのだった。これは常々、上野介や家中の者から
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)