)” の例文
「勝手が判らなくってまごまごしているのは可哀想と思うたから……。」と言いかけて氏は堅く口をじて鋭い目で前方をにらんでいた。
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
甲野さんは返事を見合せて口をじた。会話はまた途切れる。汽車は例によってごうと走る。二人の世界はしばらくやみの中に揺られながら消えて行く。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
こう聞いて、私は全身にヒヤリとしたものを感じて、口をじた。二人でばかにする……この不用意な言葉が、私の腹のどん底へ、重い弾丸を投じたものだ。
父の出郷 (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
今はからずもピラトからこのイエスを送って来られたものだから、ヘロデはたいへん喜んで、多くの言葉を費やして質問を発したけれども、イエスは堅く口をじて何をもお答えになりません。
家持は忙てゝ、資人の口をめた。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
家持はあわてて、資人の口をめた。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)