紺羅紗こんらしゃ)” の例文
上品な紺羅紗こんらしゃのマントに同じ色の白リボンの中折れという馬鹿馬鹿しくニヤケた服装が、不思議に似合って神妙な遊芸の若先生に見えた。
あやかしの鼓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
両側に桜並み木のずっとならんだ紅葉坂もみじざかは急勾配こうばいをなして海岸のほうに傾いている、そこを倉地の紺羅紗こんらしゃの姿が勢いよく歩いて行くのが見えた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
やがて、小姓達の少年が二人、厚い錦のしとねと、莨盆たばこぼんを縁側にもたらしたと思うと、鞘形綸子さやがたりんずの寝巻に、紺羅紗こんらしゃの羽織を羽織った三斎、なるほど、めっきりやつれを見せて出て来た。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
山本千太郎(一八)はこの由を直ちにホテルの支配人竹村氏に知らせたるをもって、同氏は直ちに現場に到りしに、岩形氏は紺羅紗こんらしゃの服に、茶褐色の厚き外套を着し、泥靴を穿きたるまま
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)