紙雛かみびな)” の例文
幅の狭い肩をいよいよ紙雛かみびなのように縮めていたが、野村は酔がまわるにつれてだんだん饒舌じょうぜつになって行くのが、雪子と云うものを眼の前に見ている結果の、興奮のせいでもあるらしかった。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
こればかり焼け残りたりといふ内裏雛だいりびな一対、紙雛かみびな一対、見にくく大きなる婢子様ほうこさま一つを赤き毛氈もうせんの上に飾りて三日を祝ふ時、五色の色紙を短冊たんざくに切り、芋の露をすずりりて庭先に七夕を祭る時
わが幼時の美感 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
いつか、まだ独身者であった時の百合子との散歩を僕はふと考えたものであったが、僕の後からゆっくり歩いて来ている彼女は、紙雛かみびなのように両袖りょうそでを胸に合わせて眼を細めて空を見ているではないか。
魚の序文 (新字新仮名) / 林芙美子(著)