粛殺しゅくさつ)” の例文
和煦わくの作用ではない粛殺しゅくさつの運行である。げんたる天命に制せられて、無条件に生をけたる罪業ざいごうつぐなわんがために働らくのである。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それが秋風粛殺しゅくさつの候であるから、一層その心持を強うする、というのである。詰り「秋風の」というのは「秋風の吹く時に」という位の軽い意味である。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
突然向うの曲り角から愉快な子供の笑い声が起って周囲の粛殺しゅくさつを破った。あたかも老翁の過去の歓喜の声が、ここに一時反響しているかのごとく。(明治三十四年十二月)
(新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
けだし弓は昔時せきじにあつては神聖なる武器にして、戦場に用ゐらるるは言ふまでもなく、蟇目ひきめなどとて妖魔ようまはらふの儀式もある位なれば、金気きんき粛殺しゅくさつたるに取り合せておのずから無限の趣味を生ずるを見る。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
影のようなゴンクール氏も動かなかった……粛殺しゅくさつ……又粛殺……。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
満目粛殺しゅくさつの気に充ちて旅のうら寂しさが骨身に徹る。
東海道五十三次 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)