笠木塀かさぎべい)” の例文
両家の庭境は笠木塀かさぎべいになっているが、一部だけ柾木まさきの生垣のところがある。二人はその生垣の間をぬけて、どちらかの庭へ入って遊んだ。
艶書 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
……またそこを西へ下り、かこいの笠木塀かさぎべいを越えると、一段ずつ果樹畑とか菜園などがあって、いちばん下は小さな流れのある谷底のようになっている。
桑の木物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
藤巻という家はあった、古びた黒い笠木塀かさぎべいをめぐらせた小さな構えで、門からひとまたぎの処に玄関が見える、宗吉はいちど通り過ぎて戻り、思いきって玄関に立った。
金五十両 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
笠木塀かさぎべいを隔てた向うは、小者長屋と馬役の小屋が並び、そのうしろにうまやがある。いまその小者長屋のあたりから、人のみ合うけはいと、のどいっぱいに叫ぶ、誰かのしゃがれた喚き声が聞えて来た。