礫川こいしかわ)” の例文
雷神山の急昇りな坂をあがって、一畝ひとうねり、町裏の路地の隅、およそ礫川こいしかわ工廠こうしょうぐらいは空地くうちを取って、周囲ぐるりはまだも広かろう。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
遅塚麗水ちづかれいすい翁またかつてこのあたりに鄰をぼくせしことありと聞けり。正徳しょうとくのむかし太宰春台だざいしゅんだい伝通院でんずういん前にとばりを下せしは人の知る処。礫川こいしかわの地古来より文人遊息の処たりといふべし。
礫川徜徉記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
学士は昨夜、礫川こいしかわなるそのやしきで、たしか寝床ねどこに入ったことを知って、あとは恰も夢のよう。今をうつつとも覚えず。
木精(三尺角拾遺) (新字新仮名) / 泉鏡花(著)