いしだん)” の例文
その日は、当寺こちらへお参りに来がけだったのでね、……お京さん、いしだんが高いから半纏はんてんおんぶでなしに、浅黄鹿の子の紐でおぶっていた。
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
セプチミウス・セヱルス帝の凱旋門に登るいしだんの上には、大外套被りて臥したる乞兒かたゐ二三人あり。いにしへの神殿のなごりなる高き石柱は、長き影を地上に印せり。
人々いしだんの上にうずくまる。チチアネルロはジヤニイノの髪をもてあそぶ。その目半ば閉ず。
卑怯ひきょうな、未練な、おなじ処をとぼついた男の影は、のめのめと活きて、ここに仙晶寺のいしだんの中途に、腰を掛けているのであった。
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
我はあまりの嬉さに、西班牙スパニアいしだんを驅け上りて、ペツポのをぢに光ある「スクウド」一つ抛げ與へ、そのアントニオの主公だんなと呼ぶ聲をしりへに聞きて馳せ去りぬ。
はじめ二人は、いしだんから、山門を入ると、広い山内、鐘楼なし。松を控えた墓地の入口の、とざさない木戸に近く、八分出来という石の塚をた。
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(注。モンテ、ピンチヨオには公園あり。西班牙スパニヤいしだん法蘭西フランス大學院よりポルタ、デル、ポヽロに至る。羅馬の市の過半とヰルラ、ボルゲエゼの内苑とはこゝより見ゆ。)
暗いいしだんかすかな底に、音羽の滝の音を聞いた時は
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)