磯城しき)” の例文
去るころ、奈良県の某新聞にも、「妖怪変化へんげ」と題して幽霊談が掲げてあった。その場所は同県磯城しき郡桜井町、某寺の境内である。
おばけの正体 (新字新仮名) / 井上円了(著)
吉隠よなばり浪柴なみしば」は、大和磯城しき郡、初瀬はせ町の東方一里にあり、持統天皇もこの浪芝野なみしばぬのあたりに行幸あらせられたことがある。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
頑敵たる長髄彦ながすねひこを初め、八十梟帥やそたける磯城しき賊、うかし賊、土蜘蛛つちぐもなど、兇悪な蛮賊が到る処に、皇軍を待つてゐた。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
四五十年あとまでは、唯関と言うばかりで、何のしるしもなかった。其があの、近江の滋賀の宮に馴染み深かった、其よ。大和では、磯城しき訳語田おさだ御館みたちに居られたお方。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
それから、この(一六六四)が雄略天皇の御製とせば、朝倉宮近くであるから、今の磯城しき郡朝倉村黒崎に近い山だろうということも出来る。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
野火、狐火きつねび、鬼火、天狗火てんぐび等、種々の怪火かいかある中に、大和国磯城しき郡纏向村近傍に蜘蛛火くもびと名づくる怪火ある由。
おばけの正体 (新字新仮名) / 井上円了(著)
大和では磯城しき訳語田をさだ御館みたちに居られたお方。池上の堤で命召されたあの骸を、罪人にもがりするは、災の元と、天若日子の昔語に任せて、其まゝ此処にお搬び申して、お埋けになつたのが、此塚よ。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
皇女と皇子との御関係は既に云った如くである。吉隠よなばり磯城しき郡初瀬町のうちで、猪養の岡はその吉隠にあったのであろう。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)