短銃たんづつ)” の例文
オランダ公使から贈られた短銃たんづつも、愛用の助広すけひろもすぐと手の届く座右ざうにあったが、取ろうとしなかった。刺客しかくだったら、とうに覚悟がついているのである。
老中の眼鏡 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
驚破すわ、驚破、その短銃たんづつという煙草入を意気込んで持直した、いざとなると、やっぱり、辻町が敵なのか。」
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とたんに、ズドン! と短銃たんづつたまがまつげをかすった。白いけむりが評定の間でムクッとあがった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この短銃たんづつはね、決して、舞台の小道具じゃあないのだよ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「はやまった、ことばのはずみだ、逸外はやまった。その短銃たんづつを、すぐに引掴ひっつかんで引金をひねくるから殺風景だ。」
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その上から、銀象嵌ぎんぞうがん短銃たんづつをとってかまえ、いましも、三度目の筒口つつぐちに、伊那丸の姿をねらっていたが、龍太郎が近づいたのをみると、オオ! とそのつつ先を向けかえた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
軸物かけものも、何もない、がらん堂の一つ道具に、机わきの柱にかけた、真田が短銃たんづつ両提ふたつさげ
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)