矢口やぐち)” の例文
「船頭の娘なら、頓兵衛とんべえの内のおふねじゃア無いか。矢口やぐちもここも、一ツ川だが、年代が少し合わないね」と宗匠は混ぜ返した。
悪因縁の怨 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
「名は……八さんといっていますが、八蔵か八助か判りません。なんでも矢口やぐちの方から来るのだそうで……」
半七捕物帳:51 大森の鶏 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
矢口やぐちなどの渡しにくらべてもここのは洲をはさんでいるだけに一層優長なおもむきがあっていまどき京と大阪のあいだにこんな古風な交通機関の残っていたことが意外でもあり
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
途端に身体に感ずる感電刺戟かんでんしげき執事しつじ矢口やぐちが呼んでいるのだった。さてはいよいよお待ち兼ねのお客様であるか。寝床をヒラリと飛び下ると、直ぐ左手の衣裳室いしょうしつへ突進した。——二分間。
空中墳墓 (新字新仮名) / 海野十三(著)