百眼ひゃくまなこ)” の例文
いろいろの異様なるころもを着て、白くまた黒き百眼ひゃくまなこ掛けたる人、群をなして往来ゆききし、ここかしこなる窓には毛氈もうせん垂れて、物見としたり。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「大概のお医者なれば一寸ちょっと紙入れの中にも、お丸薬や散薬でも這入っていますが、この志丈の紙入の中には手品の種や百眼ひゃくまなこなどが」
一寸ちょっと紙入かみいれの中にもお丸薬がんやく散薬こぐすりでも這入はいっていますが、此の志丈の紙入の中には手品の種や百眼ひゃくまなこなどが入れてある位なものでございます。
次のお銚子をニッコリ圓太に命じながら、その笑顔をすぐまた百眼ひゃくまなこのよう、不機嫌千万なものに圓朝のほうへ戻して
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
頭巾を着ないものは百眼ひゃくまなこというものを掛けている。西洋でする Carneval は一月で、季節は違うが、人間は自然に同じような事を工夫し出すものである。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
其の頃は今と違いまして花見の風俗は随分下卑げびたもので、鼻先のまるくなった百眼ひゃくまなこを掛け、一升樽をげて双肌もろはだ脱ぎの若いしゅも多く、長屋中総出の花見連、就中なかんずく裏店うらだな内儀かみさん達は
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
女の子はただ言葉なく出でゆくを、満堂の百眼ひゃくまなこ一滴ひとしずくの涙なく見送りぬ。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)