百合子ゆりこ)” の例文
名は百合子ゆりこと云った。歩く時は、いつも男の肩に寄りっていなければ気が済まないらしく、それがこの少女の魅力みりょくでもあった。
魚の序文 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
まだ学校から帰らない百合子ゆりこはじめうわさに始まった叔母とお延の談話は、その時また偶然にも継子の方にすべり込みつつあった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「君江さんは全く徹底しているわ。」とダンス場から転じてカッフェーに来た百合子ゆりこというのが相槌あいづちを打つと、もとは洋髪屋ようはつや梳手すきてであった瑠璃子るりこというのが
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
お延のすぐ前に坐っていた十四になる妹娘の百合子ゆりこ左利ひだりききなので、左の手に軽い小さな象牙製ぞうげせいの双眼鏡を持ったまま、そのひじを、赤いきれつつんだ手摺てすりの上にせながら、うしろをふり返った。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
今まで黙って三人の会話をいていた妹娘の百合子ゆりこが、くすくす笑い出した。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)