畢世ひっせい)” の例文
一七五一年、最後の作品『エフタ』の作曲中、次第に明を失って畢世ひっせいの努力で辛くも完成した時は、全くの盲目になっていた。
胡堂百話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
文学の尊重を認めるという口の下から男子畢世ひっせいの業とするに足るや否やを疑うという如きは皆国士の悪夢の囈語うわごとであった。
二葉亭追録 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
彼女にも恩師であった坪内先生の、畢世ひっせいの事業であった文芸協会はその動揺から解散を余儀なくされてしまった。島村氏も先生にそむいた一人になった。
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
島崎藤村氏が、中央公論誌上に年四回の割合で、畢世ひっせいの大作『夜明け前』を連載しはじめるという予告は、冬眠状態にあった正統派の文壇を一時聳目しょうもくせしめた。
昭和四年の文壇の概観 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
自分の信頼してる魂が——(愛する芸術家や畢世ひっせいの友が)——いかに凡庸であるかに人は驚かされる。
このほこりが父の畢世ひっせいの理想でもあり、唯一ゆいいつの事業でもあった。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ヘンデルはついに、友人ジュネンの編集した聖書の言葉に付して、畢世ひっせいの大傑作、聖譚曲「救世主メシア」を作曲したのである。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
畢世ひっせいの傑作、聖譚曲オラトリオ「エリヤ」に着手したのはその頃で、一方傑作「ヴァイオリン協奏曲」を完成したのもその頃である。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
その中で、畢世ひっせいの大傑作「救世主メシア」の全曲に近いレコードを聴くことの出来るのは、なんという幸せであろう。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
この一条は拙者畢世ひっせいの過ち、人手に掛って相果てた妻に対しても面目ない。
本山荻舟もとやまてきしゅうというのは、世にも不思議な人物である。死の一週間前に脱稿した畢世ひっせいの大作『食物辞典』は、荻舟の名を不朽にするであろうが、私にとっての本山君はもっと重宝な存在であった。
胡堂百話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)