甜瓜まくわ)” の例文
皆、甜瓜まくわを二つに割って、印籠づくりの立上り霊妙に、そのと、ふたとが、すっと風を吸って、ぴたりと合って、むくりと一個ひとつ、瓜が据る。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
久さんは怪訝けげんな眼を上げて、「え?」と頓狂とんきょうな声を出す。「何さ、今しがたお広さんがね、甜瓜まくわってたて事よ、ふ〻〻〻」
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
渠の 荷に 胡瓜、甜瓜まくわ、茄子 の 多い ときは まだ 初めだが
札幌の印象 (新字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
用水のそばに一軒涼しそうなやす茶屋ぢゃやがあった。にれの大きな木がまるでかぶさるように繁って、店には土地でできる甜瓜まくわが手桶の水の中につけられてある。平たい半切はんぎり心太ところてんも入れられてあった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
が、甜瓜まくわは——「瓜を食ってきている。」——かれことばとともに、唐草の炬燵こたつの上に、黄に熟したると、半ば青きと、葉とともに転がった。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
米のめしよりむぎの飯、さかなよりも揚豆腐が好きで、主人を見真似たか梨や甜瓜まくわの喰い残りをがり/\かじったり
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
金石かないわ街道の並木にあります叢祠ほこらすがたなぞは、この女神が、真夏の月夜に、近いあたりの瓜畠うりばたけ——甜瓜まくわのです——露の畠へ、十七ばかりの綺麗な娘で涼みに出なすった。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)