牴牾ていご)” の例文
覚書と詩集とにはかくの如き牴牾ていごがあるが、蘭軒が病なくして病と称したのでないことは明である。集に「病中偶成」の五律がある。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
彼が世を終るまでは、諸侯に違言なく、水戸烈公の如きも、ややもすれば牴牾ていご扞挌かんかくしたるにかかわらず、なお幕府の純臣たるを失わざりしなり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
紋は即ち往時家族制度の遺風なり。家族制度の弊を論じ個人主義を主張するの人紋所をつくるはいささ牴牾ていごきらいあるに似たり。
偏奇館漫録 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
以上記する所に就いて考ふるに、錦橋が年齢の牴牾ていごは、どうも錦橋自己より出でてゐるらしい。錦橋は江戸に来た比から、つねに其よはひに一歳を加へて人に告げた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
試に江木鰐水の行状を出して再読するに、わたくしは二者の間に甚だしき牴牾ていごあるを見ない。鰐水の「且勿喧、我将仮寐」は里恵の「ふし被申候」と符合する。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)