爪立つまだち)” の例文
するすると爪立つまだちし上つたが早いか、さつと横倒しに倒れかかつて、つつつと小走りに右へ、麥畠の畔になぐれ込んでしまつた——旋風つむじかぜが卷いたのだ。
旋風 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
わしはただ呆気あっけに取られて見ていると、爪立つまだちをして伸び上り、手をしなやかに空ざまにして、二三度たてがみでたが。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それから一同は上の方へ曲がって、傍を通りぬけ、声高に話し合いながら、四階をさして行った。彼はそれをやり過ごして、爪立つまだちで外へ出ると、そのまま下へ駆けおりた。
いくら爪立つまだちをして伸び上つて見ても中の模様はおろか、建物の棟さへ見ることが出来ない。
夜烏 (新字旧仮名) / 平出修(著)
けれど子供のせいは手を伸しても爪立つまだちをしてもその黒板のおもてまでは届かなかった。
(新字新仮名) / 小川未明(著)