燗銅壺かんどうこ)” の例文
折から長火鉢のわきへ出してあったお重箱の煮〆にしめをひろげて、猫板に乗せてあった一本まで、燗銅壺かんどうこに這入っております。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
観音様の中店の「燗銅壺かんどうこ」といった料理店で夜食をしながら、師匠は少し言葉を改め
「あとも、燗銅壺かんどうこについておる。では、そちの手酌にまかせて」と、膳ぐるみ、押しやって
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お蔦の好きなかくやの新香しんこも刻んでおいたし、茶棚には銚子も二本並べてあって、首をつまんで燗銅壺かんどうこに入れさえすれば、赤い座蒲団に坐ったきりで、そのまま、寝酒をむばかりに
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
きゅうっと、伊達巻だてまきを鳴らしながらまた、明りの輪の中へ来て坐った。そして露八が支度しておいた銚子を燗銅壺かんどうこへ入れ、それのく間を、わざとらしく、びんの毛を掻き上げている。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
長火鉢には鶴吉より年上らしい四十前後の大年増おおどしまが、しどけない伊達巻だてまきに丹前をひっかけ、燗銅壺かんどうこに入れるばかりの銚子を猫板にのせ、寝白粉ねおしろいをつけて待っているといったふうな家庭でありました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)