煙草きせる)” の例文
平次は煙草きせるをポンと叩いて、天井を突き抜けるような大欠伸おおあくびをしました。岡っ引根性を無駄に刺戟されてとんだ緊張が馬鹿馬鹿しかった様子です。
冷かし数の子の数には漏れず、格子から降るという長い煙草きせるに縁のある、煙草たばこ脂留やにどめ、新発明螺旋仕懸らせんじかけニッケル製の、巻莨まきたばこの吸口を売る、気軽な人物。
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
煙草きせるを下へ、手ですくって、土間から戸外そとへ、……や……ちょっと投げた。トタンに相の山から戻腕車もどりぐるま、店さきを通りかかって、軒にはたはたと鳴る旗に、フトかじを持ったまま仰いでとまる。
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)