炙肉あぶりにく)” の例文
先日博士は生来の健啖けんたんに任せて羊の炙肉あぶりにくをほとんど一頭分も平らげたが、その後当分、生きた羊の顔を見るのも厭になったことがある。
文字禍 (新字新仮名) / 中島敦(著)
クルティルスがはりねずみ炙肉あぶりにくを考え出したように、グリモン・ド・ラ・レーニエールは油でいためたロースト・ビーフを考えついた。
蝿帳はえちょうでふさがれたその軒窓の前には、よごれた白壁がつっ立っている。喜びといっては、ソースがいいとか炙肉あぶりにくがよく焼けてるなどと、事もなげに言われる時だけである。
飲んでから羊の炙肉あぶりにくの方を見て欲しそうに眼を放さない。張はそれを見るとたくさん切ってやった。黄いろな服の男は旨そうにった。しかし、それでもまだもの足りなさそうな顔をしている。
賭博の負債 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)