火事装束かじしょうぞく)” の例文
『小袖ではないぞ、火事装束かじしょうぞくだぞ。——期を逸しては、赤穂浪人共が存分に土足の痕をのこして逃げ去ろうぞ。早くせいっ』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
折から、裏門のくぐりを開けて、「どうも、わりいものが降りやした。」と鳶の頭清五郎がさしこの頭巾ずきん半纒はんてん手甲てっこうがけの火事装束かじしょうぞくで、町内を廻る第一番の雪見舞いにとやって来た。
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
あわやと思って自分は起き出し、まず窓から見ると、会津家あいづけ参内さんだいの様子である。そのうち自分は町の空に出て見て、火事装束かじしょうぞくの着込みに蓑笠みのかさまで用意した一隊が自分の眼前を通り過ぐるのを目撃した。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)