瀟洒さっぱり)” の例文
大きなつくえを真中にして、お新も瀟洒さっぱりとした浴衣のままくつろいだ。山本が勧める巻煙草を、彼女は人差指と中指の間にはさんで、旅に来たらしく吸った。
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
左へ曲ると瀟洒さっぱりとした西洋間、そこに案内されて、しばらくお茶と煙草たばこと雑談に興じた五人の客は、やがて屏風開びょうぶびらきになった境の扉を開けて、隣の食堂に案内されました。
吾輩の家の裏に十坪ばかりの茶園ちゃえんがある。広くはないが瀟洒さっぱりとした心持ち好く日のあたる所だ。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
何処どこぞへ出かけるところと覚しく、茶色の中折なかおれをかぶり、細巻の傘を持ち、瀟洒さっぱりした洋装をして居た。彼は驚いた様な顔をして居る故人を片隅かたすみに引のけて、二分間の立話をした。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
C——橋のたもとへ来ると池上は俯向いて待っていました。こう改まって、外でこの若旦那に会うと、まるで別の人のような感じが致します。少し撫肩なでがたで、大柄の身体に瀟洒さっぱりとした背広をつけている。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
その日の正太は元気で、夏羽織なぞも新しい瀟洒さっぱりとしたものを着ていた。「今にウンと一つ働いて見せるぞ」と彼の男らしい、どこか苦味にがみを帯びた眼付が言った。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
都の紅葉館は知らぬが、此紅葉館は大沼にのぞみ、駒が岳に面し、名の如く無数の紅葉樹に囲まれて、瀟洒さっぱりとした紅葉館である。殊に夏の季節も過ぎて、今は宿もひっそりして居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)