滑石なめいし)” の例文
戸外の作事場なのでしょうか、まるで滑石なめいしのようにてら/\光る堅い土面の上を歩んで行きますと、屋根に養蚕の天井窓のある藁家わらやがありました。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
肥後の滑石なめいし村には、滑石という青黒い色の岩が、もとは入り海の水の底に見えておりましたが、埋め立ての田が出来てから、わからなくなってしまいました。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
と云うのは立ち上った女房のお菊が、隣の部屋へ行こうとして、サラサラと足を運んだ時に、緋縮緬を纏った滑石なめいしのような脛が、裾からこぼれて見えたからである。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
滑石なめいしの円柱が左右に並び、その柱の諸所に、意匠を凝らした小さい篝火かがりびが、とりつけられて燃えている廊下は、床は空拭からぶきの寄木細工であり、天井は絵模様の合組であった。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
床が滑石なめいしで張り詰められてあり、その天井が非常に高いのが何より目立つ特色で、後房に通ずる戸口には黒色のぎぬがかけられてあり、中庭に通ずる戸口には厳重な扉が設けられてあった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)