添寝そいね)” の例文
旧字:添寢
「おお、入らせられませ」若後家の吉光きっこうまえは、とばりの蔭に、添寝そいねして寝かしつけていた朝麿あさまろのそばからそっと起きてきて、敷物をすすめた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
次の間で仕度を済ましたお浜は、穏やかならぬ話の様子が心配なので、そっと郁太郎の傍に添寝そいねをしながら二人の話を立聞き——いや寝聞きです。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
良人と添寝そいねしながらも、なおかつよその男の夢を見るのだ。その夢の中の男をしばって貰うわけにはゆかない。これも、変型だが、恋愛の一つだろう。
恋愛の微醺 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
久し振りに枕を高くして品夫と添寝そいねをしたのだそうですが、あくる朝眼を醒ましてみると源次郎氏の姿が見えない。
復讐 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
長押なげしには槍が掛けてあるし、御本人は御丁寧に冷たい人斬包丁ひときりぼうちょうを、二ちょうも三挺も取揃えて、生涯添寝そいねをしているんだと思うと、あっしは気の毒で、気の毒で
妾や手掛の所へくに鎖帷子を着てく者はありません、しかしお前が来てから盃をしたばかりで一度も添寝そいねをせぬから、それで嫌うのだと思いなさるだろうが
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
あるむず痒い不快を感じて目を醒すと、いつの間にか母親が僕の寝床に添寝そいねしていた。そして、「ね、いい子だからね」と云いながら、ここで云えない様なことを要求した。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
姉は、ことしの春に生れた女の子に乳をふくませ添寝そいねしていた。
犯人 (新字新仮名) / 太宰治(著)
もし海も見えず家の灯も見えなければ、こよいも秋草のなかに、萩と添寝そいねをするしかないと思う。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ほう、感心だのう。おれのうちの女房などは、晩げのめし食うとすぐに赤ん坊に添寝そいねして、それっきりぐうぐう大鼾おおいびきだ。夜なべもくそもありやしねえ。お前は、さすがに出征兵士の妻だけあって、感心だ、感心だ。」
(新字新仮名) / 太宰治(著)