浸潤にじ)” の例文
ただ鏡がものをうつ窓掛まどかけが風にふわふわ動く。そういうあたりまえのことにひょいと気がつくと何とも知れない涙が眼の奥から浸潤にじみ出るのだ。いつかもこういうことがあった。
売春婦リゼット (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
だが、見つめていると、あかい一面の雲のような花の層に柔かい萌黄もえぎいろの桃の木の葉が人懐ひとなつかしく浸潤にじみ出ているのに気を取りされて、蝙蝠傘こうもりがさをすぼめて桃林へ入って行った。
桃のある風景 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
そこをとっくり胸に入れて、大事な品物を預ったつもりになりなさい。元来、大事な預り物ゆえ、少しくらい嵩張ろうが、汁が浸潤にじみ出ようが、そっくりそのまま大事に預って置く。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)