海老茶袴えびちゃばかま)” の例文
四五年来の女子教育の勃興ぼっこう、女子大学の設立、庇髪ひさしがみ海老茶袴えびちゃばかま、男と並んで歩くのをはにかむようなものは一人も無くなった。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
今日は船がよほどいつもよりは西へついている。何処の学校だか行軍に来たらしい。生徒が浜辺に大勢居る。女生の海老茶袴えびちゃばかまが目立って見える。
高知がえり (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
静枝には海老茶袴えびちゃばかまをはかせて玄関番をさせ、神田小川町の依田百川ひゃくせん——学海がくかい翁のところへ漢学をならわせにやるのだった。
市川九女八 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
そのためもあって、先生はいくらか丈夫になり、女学校へ通う時分は前橋まで四里往復ほどの道を海老茶袴えびちゃばかまで自転車に乗って通ったりしました。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ただ出口で海老茶袴えびちゃばかまの二、三と逢ったが、着こなしがいかにも野暮くさく、面相がいくらか内地とは違うなぐらいで、それも軽く擦れ違ってしまった。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
商館の通勤者、税関吏、お茶場女、燈台局の官員さん、沖仲仕おきなかし、生糸検査所へ初めて採用された海老茶袴えびちゃばかま、すべて朝まだきの人通りは、みな彼らに道をひらいた。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)