海士あま)” の例文
眠れる竜の鼻の先、珠を取った海士あまよりも、危い芸をつづけた竜次郎は、漸く水草を切払って、小虎を自由の身たらしめた。
死剣と生縄 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
そのまま波に追われながら後退あとしざりして来る海士あまの呼吸を見てやっと能静氏の教うる「汐汲み」の呼吸がわかった。
梅津只円翁伝 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
玉代ぎょくだいだけ損をしやはれ、此方衆こなたしゅうの見る前で、この女を、海士あまにして慰もうと、月の良い晩でした。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もう弓を引く力もなくなった。水くぐる海士あまのすべも知らない。(ふと岩陰いわかげを見る)見つけたぞ! (岩陰いわかげに飛びゆき)待て。かにめ。(あわてとらえんとす)えゝ逃げおったわい。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
私はモデルに寝たポーズをさせる時屡次しばしばその足の裏を見るが、どうも黒く汚れていたりして海士あまの形相を打ち消してくれそうなものに出会わない、その上太い足の指がお互いに開いていて
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
海士あま小海老こえびに交るいとゞかな 芭蕉
俳句とはどんなものか (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
陽炎かげろうや身を干海士あま日向ひなたぼこ 朱拙
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
海士あまもし知らばいかならむ
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
よしそれとても海士あま
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
なぶるになれし海士あまの子よ
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
昔人丸が詠じたる和歌の浦にもしほ垂れつつ世を渡る海士あまも、かくやと思ひ遣る。
海士あまみのきる時雨かな、潮のしぶきは浴びながら、夜露やいとう、ともの優しく、よろけた松に小綱を控え、女男めおの波の姿に拡げて、すらすらと乾した網を敷寝に、みよしの口がすやすやと、見果てぬ夢の岩枕。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)