水茎みずくき)” の例文
旧字:水莖
世尊寺流せそんじりゅうとか醍醐風だいごふうとかいうような、色紙うつりのする水茎みずくきの文字ではない。文字もかれの気質どおり、わがままにね、気ままに躍っている。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こうやって目のあたりになつかしい水茎みずくきのあとをみると、その恋しさ、悲しさはつのるばかりで、主従たがいに涙にむせんで言葉を交すこともできなかった。
錦子に思いを寄せた郷里の男のことは、いなぶねの死後に出た秘書——美しい水茎みずくきのあとで、改良半紙に書かれた「鏡花録」によってわずかの人が知っているだけだ。
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
なるほど、そこには、やさしい女文字の水茎みずくきのあとが、長々と紙の上にたなびいている。こういう手紙を人に知らさず認めて、胸を躍らせながら、やりとりすることは憎い!
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
水茎みずくきのあともうるわしく、相当の教養を思わせる文章である。すでに六十五、六歳……というのは、読み終えてからわかったことで、手紙から受けた感じは、申し分なく若々しいものだった。
胡堂百話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)