リンカンとウェーランドを過ぎてどこかしらに往く西に向かってすすむ旅行者たちの目にはわたしは agricola laboriosus ——水呑百姓みずのみびゃくしょうそのものに映った。
座長と見える老爺など終生水呑百姓みずのみびゃくしょうの見るからに武骨そのものの骨柄こつがらであるが、巧みに女形をしこなして優美哀切を極め、涙の袖をしぼらせること、いつの年も変りがないということである。
閑山 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
笹屋ささやの庄助さのように自分で作ってる農なら、まだいい。どんな時でもゆとりがあるで。水呑百姓みずのみびゃくしょうなんつものは、お前さま、そんなゆとりがあらすか。そりゃ、これからの世の中は商人あきんどはよからず。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)