気随気儘きずいきまま)” の例文
気随気儘きずいきままの画家の心が遠慮なく画面に行われているとはいえども、その根底をなす処には必ず伝統の積み重ねられたる古き心が隠され
油絵新技法 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
心柄こころがらとはいひながらひてみずから世をせばめ人のまじわりを断ち、いえにのみ引籠ひきこもれば気随気儘きずいきままの空想も門外世上の声に妨げまさるる事なければ
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
特に信玄から授けられた武田家の割符を持っているので、甲州の地は気随気儘きずいきままに通ることも出来れば泊まることも出来る。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
もし春琴が今少し如才じょさいなく人にへりくだることを知っていたなら大いにその名があらわれたであろうに富貴ふうきに育って生計の苦難を解せず気随気儘きずいきまま振舞ふるまったために世間から敬遠され
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
養家に行きて気随気儘きずいきままに身を持崩し妻にうとまれ、又は由なき事に舅を恨みそしりて家内に風波を起し、ついに離縁されても其身の恥辱とするに足らざるか。ソンナ不理窟はなかる可し。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
御用達ごようたし、——肩で風を切る、勢いで、倉には黄金は、山程積んであろうところから、気随気儘きずいきままに大金を掴み出し、今日の生計たつきにも困るような、貧しい者や、病人に、何ともいわず、バラ撒いて
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
一層嫁の気随気儘きずいきままつのるであらうし、庄造もそれをアテにして怠けるであらうし、結局親子三人の思はくが皆それ/″\に外れて来るところから、争ひの種が尽きないであらう。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)