気息いぶき)” の例文
旧字:氣息
が、やがて竹のつつを台にした古風なランプに火がともると、人間らしい気息いぶきの通う世界は、たちまちそのかすかな光に照される私の周囲だけに縮まってしまった。
疑惑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
正義をもて貧しき者をさばき、公平をもて国の中の卑しき者のために断定さだめをなし、その口の杖をもて国を打ち、その口唇の気息いぶきをもて悪人を殺すべし。(イザヤ一一の四)
ああしかし僕は君を離したくない、君が僕を離れんとすればするほど君を僕の側に止めておきたい。そしてできるだけ私の暖かな気息いぶきを吹きかけてじんわりと君の胸のあたりを包んであげたい。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
しかし法水は、それに妖魔のような気息いぶきを吹き込んでいった。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
充分装置の抒情的な気息いぶきを、圧倒してしまうものであった。
オフェリヤ殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)