かじ)” の例文
それから床の上に腹這はらばいになり、両手を寝台の下につっこんでかじのように動かす。ないことがわかっている壺をさがしてみるのである。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
「誰も気がつかなかったそうですよ、船頭は舫っている時でも気が張っているから、や、かじの音を聞き逃すはずはないと言いますよ」
かくて漁師の娘とはなりぬれど、弱き身には舟のかじ取ることもかなはず、レオニのあたりに、富める英吉利人イギリスびとの住めるにやとはれて、小間使こまづかいになりぬ。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「まず換え玉も大丈夫、あの塩梅あんばいなら露見しそうもない」こう云ったのは鳰鳥であった。「それにお前達四人の者が、上手にかじを取りさえしたら三日や五日は誰一人贋物などとは思うまいよ」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)