樵夫しょうふ)” の例文
緑草直ちに門戸に接するを見、樹林の間よりは青煙しずかに巻きて空にのぼるを見る、樵夫しょうふの住む所、はた隠者の独座して炉に対するところか。
小春 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
恐らくは後来樵夫しょうふと物ずきとの外は通らぬ路になり、峠の茶屋は茶屋跡とでもいう地名になってしまうことであろう。
峠に関する二、三の考察 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
天性の猟師が獲物をねらっている瞬間に経験する機微な享楽も、樵夫しょうふが大木を倒す時に味わう一種の本能満足も、これと類似の点がないとはいわれない。
科学者と芸術家 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
また蛮民の住するなきも、深山幽谷、人跡を見ざる所に樵夫しょうふ、行者のごときものに遭遇すれば、たちまち人間以外の一大怪物ならんと思うは、無理ならぬことなり。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
植物家らにして、これらの人寰じんかんを絶したる山間谿陰に、連日を送りたるものあるは、これを聞かざるにあらずといへども、しかもかくの如きはこれ、漁人海にうかび、樵夫しょうふ山に入ると同じく
山を讃する文 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
斎藤義龍よしたつ岐阜ぎふを攻めるに当って、金華山の峰つづきを、その裏山からじて奇襲したとき、山中で道案内をした一樵夫しょうふ——まだ十六、七歳の、山家やまが育ちの若者こそ、今日、寄手の一方に
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
余は小径こみちを山中に求むる時は余の地理天文に達しるが故に樵夫しょうふの指揮を見貶みくださざるなり、余の国と国人とに関して余が外国人の説をことごとく容れざるは必しも余の傲慢なるが故にあらざるなり
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)