横綴よことじ)” の例文
……又膝栗毛で下司げすばる、と思召おぼしめしも恥かしいが、こんな場合には絵言葉まきものや、哲理、科学の横綴よことじでは間に合わない。
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
権兵衛は其の床の前の小机の傍にいた。其の小机には半紙を二枚折にした横綴よことじの帳面を数冊載せてあった。
海神に祈る (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
蛙の声に家も身もめらるるように感じた。かれは想像にもつかれ、さりとて読むべき雑誌も持って来なかったので、包みの中から洋紙を横綴よことじにした手帳を出して、鉛筆で日記をつけ出した。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
甲野さんは寝ながら日記をけだした。横綴よことじの茶の表布クロースの少しは汗にごれたかどを、折るようにあけて、二三枚めくると、一ページさんいちほど白い所が出て来た。甲野さんはここから書き始める。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
坊さんは日本紙を横綴よことじにした帳面を繰り開きながら、出て来て
吾妻橋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「魔道伝書」ようございますか、勿論、板本でなし、例の貸本屋を転々する写本でなく、実にこの婆さんの兄の間淵が秘蔵した、半紙を部厚に横綴よことじの帳面仕立で。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)