桟道かけはし)” の例文
旧字:棧道
杜陽とようげなんの二人は山道にかかっていた。足がかりのない山腹のいわから巌へ木をわたしてしつらえた桟道かけはしには、ところどころ深い壑底たにそこの覗かれる穴が開いていて魂をひやひやさした。
陳宝祠 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
喰い終る頃、うっすらと、下の谷間は霧がれかかって来た。敵の搦手からめてだ。——しょく桟道かけはしを思わすような蔦葛つたかずらの這った桟橋かけはしが見える。絶壁が見える。巨大な青苔あおごけえた石垣やらさくなども見える。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
雪深き山の桟道かけはし君ならでまたふみ通ふ跡を見ぬかな
源氏物語:48 椎が本 (新字新仮名) / 紫式部(著)
其処には荒廃したやしろが夕闇の底に見えていた。桟道かけはしに見覚えのある陳宝祠ちんほうしであった。杜陽はびっくりして侍女の方を見た。侍女は二羽のきじとなって鳴きながら壑の方へ飛んで往った。
陳宝祠 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)