根限こんかぎ)” の例文
藤尾が椽の柱に倚りかかるよほど前から、なぞの女は立て切った一間ひとまのうちで、鳴る鉄瓶てつびんを相手に、行く春の行き尽さぬを、根限こんかぎり考えている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
俺がもしおなかさんに、手出しでもしたら何とでも云え、手を出すどころか根限こんかぎり、出来るだけの親切をしているのに、別れ別れになれとは、そりゃひど過ぎる。
中山七里 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
かくて、少年たちは、好奇より恐怖が多いせいか、行って見ようとはいわず、大人たちはてんで一笑に附して問題にしないから、根限こんかぎりの二人の宣伝が、ここでは全く無効になりました。
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
明智は真黒な水の小山、水の谷底を、根限こんかぎり漕ぎまくった。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ひどく狼狽うろたへながら、根限こんかぎり馬を駆り立てて走り出した。
その裏に彼女の根限こんかぎり掘り返そうとつとめた秘密の潜在する事をあんに自白した。自白?。彼女はよく自分に念を押して見た。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
始めのうちこそ、追っついてやるから今に見ていろと云ういきおいで、根限こんかぎり這ったりかがんだりしたが、残念な事には初さんの歌がだんだん遠くへ行ってしまう。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)