私は黙ってうなずきながら、湯ざましの湯を急須きゅうすいだ。この可憐な捨児の話が、客松原勇之助まっぱらゆうのすけ君の幼年時代の身の上話だと云う事は、初対面の私にもとうに推測がついていたのであった。
捨児 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)