本栖もとす)” の例文
馬はこれから約一里向の本栖もとすの村から引いて來るのだから今夜の内に命じて置かないと仕事に出てしまふだらうといふことであつた。
湖水めぐり (旧字旧仮名) / 野上豊一郎(著)
北溟ほくめいの雲に没している、眼を落すと、わが山麓には、富士八湖の一なる本栖もとす湖が、森の眼球のように、落ち窪んで小さく光っている。
雪中富士登山記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
「東へ行けば富士のお山、西へ辿たどれば本栖もとすの湖、北へ帰れば人界でございます」
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
精進しょうじを過ぎ本栖もとす発足って駿甲の境なる割石峠の辺から白峰が見える。霞たつ暖い日で、山は空と溶け合うて、ややともすればその輪廓を見失うほど、はるかに、そしてかすかなものであった。
白峰の麓 (新字新仮名) / 大下藤次郎(著)
本栖もとすうみかがよふ見れば水皺みじわ立ち霧ながれをり流るとなしに
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
脚下には、富士五湖中で一番深いといわれている本栖もとす湖、それを囲んだ丘陵、遥に高く、天子山脈や、南アルプスの大屏風だいびょうぶが立ちふさがっている。
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
けれども、道は全くひどい道で、石ころの多いことは箱根の舊道などの比ではなく、本栖もとすの村の入口の坂などは、後から考へて見ると、初めての經驗でよく乘れたと思はれるほどであつた。
湖水めぐり (旧字旧仮名) / 野上豊一郎(著)
「さよう、本栖もとすの湖へ……」
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
裾野からすなを盛り上げたように高く、雪が粉を吹いたように細い筋を入れている、その下に山中湖、それから河口湖が半分喰い取られたようになって、山蔭の本栖もとす湖の一部と
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
やがて本栖もとすの湖岸へ来た。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)