木偶にんぎょう)” の例文
叔母に一礼して文三が起上ッて、そこそこに部屋へ戻ッて、しつの中央に突立つったッたままで坐りもせず、やや暫くの間と云うものは造付つくりつけの木偶にんぎょうの如くに黙然としていたが、やがて溜息ためいきと共に
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「ヤったな。ああ、痛え。」「おお、痛え。済まねえやい、木や土でこせえた木偶にんぎょうじゃねえ。」「血のある人間だ、さあどうする。」とくってかかる混雑紛れ、お丹等老婦人を見咎みとがめられず
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)