日覆ひおお)” の例文
その三つならんだ入口の一番左側には空箱にむらさきいろのケールやアスパラガスが植えてあって小さな二つの窓には日覆ひおおいが下りたままになっていました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
る日彼女は所在なさに、例年のように葭簀張よしずばりの日覆ひおおいの出来たテラスの下で白樺しらかばの椅子にかけながら、夕暮近い前栽せんざいの初夏の景色をながめていたが、ふと
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その火は迅速に大きくなって行く。急いで原稿や帳簿の取り出しにかかって、まだその全部を出し切らないうちに、もう明かり窓の上の日覆ひおおいに火がついていた。
地異印象記 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
彼は相国寺しょうこくじから参内する仏国公使ロセスを見ることはかなわなかったが、南禅寺を出たオランダ代理公使ブロックと、その書記官の両人が黒羅紗くろらしゃ日覆ひおおいのかかった駕籠かごに乗って
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その三つならんだ入口のいちばん左側ひだりがわには空箱あきばこむらさきいろのケールやアスパラガスがえてあって小さな二つのまどには日覆ひおおいがおりたままになっていました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
その前へ来て黒羅紗くろらしゃ日覆ひおおいなぞのかかった駕籠をめさせる諸大名もなければ、そのたびに定紋じょうもん付きの幕を張り回す必要もない。広い板敷きのところは、今は子供の遊び場所だ。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
もうこのテラスに渡してある日覆ひおおいの葭簀張よしずばりも、近日取りけなければならない。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
時には捧の前後に取りつく四人の駕籠かきが肩がわりをするので、正香らは黒羅紗くろらしゃ日覆ひおおいの下にくっきりと浮き出しているような公使らの顔をその窓のところに見ることはできた。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)