文楽ぶんらく)” の例文
旧字:文樂
この間も文楽ぶんらく合邦がっぽうで玉手御前が犠牲になるところを見ましたが、思想的に共鳴するとしないとにかかわらず、いちばんわれわれを動かすのは
生活と一枚の宗教 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
しかも僕の見た人形芝居は大抵たいてい小幡小平次こばたこへいじとかかさねとかいふ怪談物だつた。僕は近頃大阪へき、久振ひさしぶりに文楽ぶんらくを見物した。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
岡田は「そうですか。文楽ぶんらくだと好いんだけれどもあいにく暑いんで休んでいるもんだから」と気の毒そうに云った。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
文楽ぶんらくあやつり人形が、人形のくせに息使いをするのと同じに、この等身大の手品人形も、確かに呼吸いきをしている。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
父はそのときを最後に文楽ぶんらくを退いたが、その間三年というものは大阪に居着いて東京へは帰らなかった。
桜林 (新字新仮名) / 小山清(著)
一度は大阪「文楽ぶんらく」につれて行かれて、津ノ子という芸名を貰うて、跡を継いだこともあるんじゃよ。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
文楽ぶんらく義太夫ぎだゆうを聞きながら気のついたことは、あの太夫の声の音色が義太夫の太棹ふとざおの三味線の音色とぴったり適合していることである、ピアノ伴奏では困るのである。
雑記帳より(Ⅰ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
中で焼物は伊賀野附近で焼かれ、主に黄色い鉛釉なまりぐすりを用います。どんぶり、皿、土瓶などを見かけます。しかしこの島の産としては「文楽ぶんらく」の人形を特筆せねばならないでありましょう。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
それは余の学校の保証人栗生くりふ氏は古白君の姻戚で、古白君は帰郷の往還ゆきかえりによくその家に立寄ったからであった。ある時は古白君と連立って帰郷し、帰路大阪へ立寄って文楽ぶんらくを一緒に聞いた事もあった。
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
文楽ぶんらく浄瑠璃じょうるり人形にまつわる不思議な伝説、近代の名人安本亀八のいき人形なぞを御承知でございましたなら、私がその時、ただ一個の人形を見て、あの様に驚いた心持を
人でなしの恋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
もっと大きいのでは、文楽ぶんらく人形のおひめさま、サナエちゃんと同じくらいの大きさの西洋の少女人形、電気で動くロボット人形まで、かずかぎりもなくならんでいるのです。
魔法人形 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
文楽ぶんらくの人形芝居で、一日の演技の内に、たった一度か二度、それもほんの一瞬間、名人の使っている人形が、ふと神の息吹いぶきをかけられでもした様に、本当に生きていることがあるものだが
押絵と旅する男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)