打衝ぶっつ)” の例文
が、棚のそばにあった筈の椅子へ上衣をかけるつもりで其方そっちへ行きかけたとたんに、何かの道具に膝をしたたか打衝ぶっつけて、あまりの痛さにアッと声をあげた。
孤独 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
まず伸子が左利ひだりききでない限りは、『聖ウルスラ記』を右手から投げて頭上を越え、それを花瓶に打衝ぶっつけるということは、全然不可能だろうと思われるのです。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
船艙では、破戸漢ごろつきどもが首をのばしてガルールの帰りを待っていたが、間もなく大濤おおなみがどっと船の横っ腹へ打衝ぶっつかって船体がはげしく揺れだすと、帆檣ほばしらがギイギイ鳴る。綱具が軋む。
そして、伸子が蹌踉よろめいて花瓶に打衝ぶっつけたと云う『聖ウルスラ記』は、入口のすぐ脇にある、書棚の上段にあったのです。しかし、その書物は、それがため重心を失うと云うほどの重量ではありません。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
はじめてお祖母さんのそれが、具象的なものに打衝ぶっつかった。
方子と末起 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)